研究課題/領域番号 |
21591249
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
窓岩 清治 自治医科大学, 医学部, 講師 (70296119)
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研究分担者 |
小林 英司 自治医科大学, 医学部, 教授 (00245044)
大森 司 自治医科大学, 医学部, 講師 (70382843)
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キーワード | 血友病A / インヒビター / 免疫寛容 / 第VIII因子欠損マウス / PAI-1欠損マウス |
研究概要 |
本研究では、線溶系調節因子であるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の機能を効率的に制御するシステムを血友病Aマウスモデルに導入することにより、線溶系応答の効果的な制御が抗原特異的な免疫寛容をもたらし、抗第VIII因子同種抗体の発生を防ぐ可能性を探ることを目的して解析を進めた。1)第VIII因子(FVIII)欠損マウスとPAI-1欠損マウスとの交配により作製した新規FVIII/PAI-1ダブルノックアウトマウスは、FVIII単独欠損マウスと比較してFVIII抗原の経静脈的反復感作に対する免疫応答が有意に低下していた。一方で破傷風トキソイドに対する免疫応答は維持されていたことから、PAI-1因子の欠損が抗原特異的な免疫寛容をもたらすものと考えられた。2)FVIII反復刺激を行ったFVIIII/PAI-1ダブルノックアウトマウスのリンパ節および脾臓では、CD11b+細胞やCD45R+細胞におけるMHC-II抗原提示能の低下とともに、サイトカインプロファイルからT細胞性アネルギーおよびMHC-ClassIICD25+FoxP3+制御性T細胞が誘導されていた。これらの結果から、血友病A個体におけるPAI-1欠損による線溶系応答の制御が、抗原特異的な免疫寛容をもたらしインヒビターの発症を予防し得る可能性とともに、免疫寛容の成立する機序が明らかになった。 生体防御機構のひとつである線溶系が免疫系制御に関与するという知見は新しく、本マウスやsiRNAなどを導入した線溶系遺伝子改変システム用いることにより、線溶系と免疫系との関わりを多角的に具現化できることから、血友病Aインヒビターの発症予防における特異的かつ効率的な新規治療法の開発基盤に繋がる可能性があるものと考えられる。
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