研究課題
本研究では、線溶系調節因子であるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の機能を効率的に制御するシステムを血友病Aマウスモデルに導入することにより、線溶系応答の効果的な制御が抗原特異的な免疫寛容をもたらし、抗第VIII因子同種抗体の発生を防ぐ可能性を探ることを目的して解析を進めた。1)第VIII因子(FVIII)欠損マウスとPAI-1欠損マウスとの交配により作製した新規FVIII/PAI-1ダブルノックアウトマウスの解析から、PAI-1因子の欠損が抗原特異的な免疫寛容をもたらした。2)FVIII反復刺激を行ったFVIII/PAI-1ダブルノックアウトマウスのリンパ節および脾臓からセルソーティング法により単離したCD11b+細胞やCD45R+細胞のMHC-II抗原提示能は、FVIIIノックアウトマウスに比較して有意に低下していた。さらにin vitroでのFVIII刺激によるIL-2、IL-12およびIFN-gammaの産生が増加しない一方で、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞が誘導された。3)PAI-1RNAi系による線溶調節因子発現制御システムを導入した血友病Aインヒビター治療への展開として、PAI-1shRNAウイルスベクターをFVIII因子欠損マウス由来骨髄細胞c-kit+sca-1+Lin-分画に感染させ細胞移植したPAI-1 shRNA導入FVIII欠損マウスモデルを作成した。本マウスはPAI-1 scrRNA導入個体に比較してFVIII反復刺激後の抗体価が有意に低下していた。これらの結果は、血友病A個体におけるPAI-1の制御が、抗原特異的な免疫寛容をもたらしインヒビターの発症を予防し得る可能性を示すものである。生体防御機構のひとつである線溶系が免疫系制御に関与するという知見は新しく、血友病Aインヒビターの発症予防における新規治療法の開発基盤に繋がる可能性があるものと考えられる。
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