本研究では、申請者が開発した「少量のヒト皮下脂肪組織から大量に血小板を得られる培養システム」により産生される血小板の詳細なcharacterization、特に血小板機能調節の要である血小板活性化に着目した検討を実施し、試験管内で得た血小板と末梢血中の血小板の相違を明らかにし、本システムの基礎研究・臨床応用、特に血小板輸血製剤への有用性を検討した。in vitro血小板産生のstarting materialとして、ヒト皮下脂肪組織、ヒト造血.幹細胞、マウス脂肪前駆細胞株、マウス皮下脂肪組織を用い、それぞれから得られた血小板とヒト血小板あるいはマウス血小板のcharacterizationを行った。血小板のcharacterizationとして、電子顕微鏡による微細構造の観察、フローサイトメトリー法による血小板特異的表面マーカー(CD41、CD42a、CD42b)の検討、機能検討として、4種の血小板機能惹起剤(エピネフリン、ADP、コラーゲン、リストセチン)それぞれで刺激した際の血小板活性化マーカーのP-selectin血小板膜発現、fibrinogenとの結合能、そして活性化血小板に反応する抗体PAC-1との反応性の解析を行った。固相fibrinogenに上記4種の惹起剤とTRAPそれぞれで刺激した場合の血小板を反応させ、上記同様に免疫染色を行った。これら検討の結果、脂肪組織からin vitro分化誘導にて得られた血小板は造血.幹細胞から得られるものに比し、高い血小板機能を有する事を認めた。また、採血後2時間での血小板サンプルとの比較では、採血された血小板の方が高い血小板機能を示したが、採血後6-7時間の血小板との比較では、脂肪組織からin vitro分化誘導にて得られた血小板の方が高い機能を有する事を認めた。本研究結果は、ヒト皮下脂肪組織からin vitro分化誘導にて得られた血小板は血小板輸血に有用な可能性を示した。
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