研究概要 |
われわれは骨髄内直接移植(IBMI)法を開発することにより、非常に効率的なヒト未分化造血幹細胞(HSC)の測定法を開発した。本法を用いて、ヒト臍帯血由来の未分化HSCであるCD34陰性(CD34-) SCID-repopulating cell(SRC)の同定に初めて成功した(Blood 101:2924,2003)。これまでの研究で、このCD34-SRCが従来最も未分化とされていたCD34+CD38-SRCに比べてより未分化なHSCであることを示した(Int J Hematol 79 : 328, 2004)。さらに、CD34-SRCの免疫特性に関する検討を行い現時点でヒトの最も未分化なHSCの免疫特性がLin-CD34-c-kit-flt3-であることを明らかにした(Blood 106 : 235a, 2005 ; Stem Cells 25 : 1348, 2007)。このCD34-HSCと従来報告されていたCD34+CD38+/-HSCとのhierarchy上の位置付けに関する研究を進め、CD34+CD38+ HSCがより分化したHSCであり、一方、CD34+CD38- HSCやCD34- HSCはNOGマウスへの移植後24週目でもヒトの造血を支持するlong-term repopulating SRCであることを明らかにした(Blood 108(11) : 470a, 2006 ; Leukemia 24 : 162, 2010)。加えて、18種類のLin抗体を用いる新たなnegative selection法を開発し、CD34-HSCを1/1,000の頻度(従来法1/25,000)まで高度に濃縮純化することに成功している(Blood 114:336,2009;投稿中)。並行して、マウスのHSCに特異的なSca-1に代わる陽性マーカーの同定を進め、有望な分子マーカーを同定している。
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