研究概要 |
白血病細胞の生存・異常増殖には種々の因子が関与しており、それらが複雑に制御されている。液性因子、例えばサイトカインなどの関与はその一つであるが、申請者らは脳内で重要な役割りを果たす神経栄養因子の一つであるBDNFが、白血病細胞株から恒常的に産生されていることを見出していた。本年度ではBDNFの免疫細胞、特にT細胞に対する影響を中心に解析することを目的とした。 1.BDNFによる制御性T細胞の誘導 マウスの脾臓細胞より、CD4陽性細胞を磁気ビーズ法により調製し、それらをBDNF或はCD3で刺激したところ、制御性T細胞のマーカーであるFoxp3の発現誘導が見られた。 2.Foxp3発現誘導のパスウェイの解析 Foxp3の誘導には、NF-AT、NF-κB、Smadなどの関与が知られている。それらに特異的な阻害剤を用い、発現誘導を解析したところ、発現の減弱が認められた。また、BDNFのレセプターとして働くことが知られているp75-NTRの(RhoA)の阻害剤によっても発現の阻害が認められた。 3.リポータアッセイによる転写因子活性化の解析 白血病細胞株(Hut102など)にAP1,NF-AT,CREBのリポータープラスミドをトランスフェクションし、そのルシフェラーゼ活性を解析したところ、BDNFはAP1,NF-ATを活性化するが、CREBは活性化しなかった。 以上より、白血病細胞から産生されるBDNFは、免疫システムに対し抑制作用を持つ制御性T細胞の誘導により、白血病細胞増殖の環境を整えている可能性が示唆された。
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