研究概要 |
先ず、ヒトES細胞株(KhES-3)を用いて、我々独自の手法(Stem Cells 27 : 59-67, 2009)の他に、造血幹細胞の誘導が可能と考えられる新たな2つの手法も含めて、血液細胞の分化誘導を行った。その結果、我々の手法においては、マクロファージ分化が主体となってしまうことも度々見られるのに対して、他の2つの手法においては成体型の赤芽球や造血前駆細胞の誘導が可能であり、3種類の手法を全て行ってゆくことが重要と考えられた。 次に、ヒトiPS細胞を用いて、我々独自の手法により造血細胞分化を行なったが、試した2株(201B7、253G1)のどちらでも嚢状構造体の形成が確認された。ただし、ヒトES細胞(KhES-3)では全てのsphereから円盤状細胞層が形成され、その過半数でSLSが形成されたのに対して、ヒトiPS細胞で円盤状細胞層の形成を認めたのは一部(<3割)のsphereであった。201B7では、マクロファージのみが誘導されたのに対して、253G1株においては、マクロファージのみならず、一過性ではある未分化造血前駆細胞も観察された。また、253G1株においては、マクロファージの血球貪食像が観察された。一方、コロニーアッセーにおいては、253G1株においては、ヒトES細胞(KhES-3)と同様に顆粒球コロニーを形成したが、201B7株においてはコローに形成は全く認められなかった。 以上より、201B7株においては、血球分化そのものが低下しており、253G1株においては、一端は産生された血球がマクロファージによって貪食されている可能性が示唆された。また、次年度以降は、我々独自の手法以外の手法を試みてゆくことの必要性が確認された。
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