我々の研究グループのヒトiPS細胞からの血液細胞の分化誘導培養法は、前半のsphere形成浮遊培養と後半の平面接着培養からなる2段階培養システムで、我々がヒトES細胞の系において開発した手法である。今年度は国立成育医療研究センターから供与された株(#25、初期化4因子導入株)を中心に検討して、接着培養用の後に嚢状構造体の形成が確認された。嚢状構造体の切開による血球回収後は、速やかに切り口がふさがり血球産生が再開された。回収された細胞は、成熟好中球も含まれ、コロニーアッセーにおいても顆粒球系細胞の存在が確認された。このような顆粒球系細胞は、CD45陽性CDllb陽性の食細胞系の成熟血液細胞で貪食能を有していた。ヒトES細胞の時と異なり、60日以上の造血が持続し、嚢状構造体内部では好中球系の造血が長く保たれていた。更に今年度は、高密度培養、低密度培養も検討したところ、高密度培養や低密度培養においては、中密度培養と異なり嚢状構造体を形成せずに造血が進み、低密度培養においては、高い比率で好中球系の造血が認められた。このような好中球はNBT還元応が陽性であることも確認した。 東京医科大学微生物学講座との共同研究により、エンドキサンによる白血球減少時おける腸管内緑膿菌による敗血症モデルを駆使して、ヒトiPS細胞由来の食細胞が、この日和見感染敗血症モデルを救命できるか否かを検討した。当初の2回の実験では、被移植群では敗血症を起こすか死亡したが、移植群においては生存し、しかも敗血症症状を起こさなかった。このように2回の実験で有効性が示された。 次年度は、以上のような好中球産生の系を応用して、未分化血液細胞の産生の系を構築する。
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