東京医科大学微生物学講座との共同研究により、エンドキサンによる白血球減少時おける腸管内緑膿菌による敗血症モデルを駆使して、ヒトiPS細胞由来の食細胞が、この日和見感染敗血症モデルを救命できるか否かを検討した。当初の2回の実験では、被移植群では敗血症を起こすか死亡したが、移植群においては生存し敗血症症状を起こさなかった。ちなみにこの2回は、たまたまマクロファージ優位の分化誘導で、その後の好中球優位の分化誘導検体では有効性が不明確だったので、M-CSFを添加してマクロファージ優位の分化誘導を実施して敗血症モデルでの検討を行った。その結果、一定の効果が認められた。 初期化4因子を組み込んだセンダイウイルスベクターを用いて、新生児皮膚由来線維芽細胞BJとヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からヒトのiPSを試みた。培養細胞にベクター添加後、一定の期間の後には、ヒトES細胞と極めて類似した細胞形態を有する細胞のコロニーが数多く観察され、その様な細胞からヒトiPS細胞が樹立された。樹立されたヒトiPS細胞は、多能性幹細胞特異的マーカーを発現し、染色体は正常で、SeVベクターもトランスジーンも検出されなかった。従って、ベクターやトランスジーンが無い安全なヒトiPS細胞が樹立された。 BJから樹立したヒトiPS細胞を用いて我々独自の手法により、血液細胞の分化誘導を行ったところ、約30%が好中球系の血球に分化した。HUVECから樹立したヒトiPS細胞に関しては、同様に我々独自の手法に1部改変を加えて赤芽球もできるよう、しかも、無血清条件で分化誘導を行い、グロビン遺伝子などから成人型の赤芽球の産生が確認された。
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