本研究の目的は、申請者らが開発したマイナー組織適合性抗原形成に関わる一塩基多型(SNP)を迅速に同定するアルゴリズムのソフトウェアと、ウェブのインターフェースとをリンクする対話型コンピュータシステムの構築および、SNP同定に必要なHapMap LCLの拡充とアッセイ系の開発である。 本年度はUNIX上で作動するソフトウエアを、インターネットのウェブページからプルダウンメニューで条件入力するだけで結果を得るCGIインターフェースの開発を終了した。国際的に利用されることを考慮し、ウェブページは英語を用い、また対象人種としてまず白人由来のCEUパネルを選択した。また解析の基礎となるHapMapデータを当初開発したフェーズ2からフェーズ3に更新した。動作確認として、HLA-B7拘束性の細胞傷害性T細胞(CTL)クローンにて、HLA-B7を遺伝子導入したCEU LCL細胞の傷害性パターンをCTLからのインターフェロンγ遊離の有無で決定し、作製したウェブページからデータ入力し、相関の強いSNPのリストが作成されウェブページに表示されることを確認した。次いで、最高の相関係数を示したSNPを含む遺伝子の翻訳蛋白質上にCTLクローンが認識する新規抗原エピトープが実際に同定された(論文執筆中)。ウェブページは論文受理後に一般公開予定である。 また迅速なアッセイ法として分泌型に改変したHLA分子を遺伝子導入したLCLパネルを作製し、その上清中のHLA分子が実際にインジケータ細胞上で提示されうることを確認した。ただし抗原によっては遊離HLA分子には効率よく提示されないものがあり、コンストラクトの改良を行っている。 HapMap LCLからiPSを誘導する実験で最初に必要なEBウイルスを除去する方法は競合的ペプチドの添加で概ね可能となったため、今後LCLからipsへの誘導を試みる予定である。
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