シェーグレン症候群(SS)患者血清中にムスカリン作働性アセチルコリン受容体3(M3R)に対する自己抗体が存在すること、末梢血単核球にM3R反応性CD4+T細胞が存在することを明らかにしてきた。本研究では、M3R分子に対する免疫応答が自己免疫性唾液腺炎発症を誘導するか否かを検討する事を目的とした。方法として、M3R-/-マウスにM3Rペプチドを免疫しその脾細胞をRag-1-/-マウスに経静脈的に細胞移入した。さらに、T細胞にRORγt分子を過剰発現するRORγtトランスジェニックマウスを用いて、唾液腺炎発症機構について解析した。その結果、以下の事実を明らかにしてきた。1)M3R-/-→Rag-1-/-マウスにおいて唾液腺炎が認められた。2)H3R反応性T細胞により唾液腺炎が誘導された。3)唾液腺にINF-γおよびIL-17発現が認められ、M3R反応性T細胞からIFN-γおよびIL-17が有意に産生された。4)M3R-/-xIFN-γ-/-→Rag-1-/-マウスでは唾液腺炎スコアが有意に低下していた。一方、M3R反応性T細胞からのIL-17は有意に増加していた。5)RORγtトランスジェニックマウスにおいて、唾液腺炎と涙腺炎が自然発症し、IL-17産生M3R反応性T細胞、抗M3R抗体が検出された。 以上の研究成果から、M3Rを認識するT細胞がSS類似の自己免疫性唾液腺炎発症に重要であることが判明した。今後、M3RのT細胞エピトープを決定しアナログペプチドによる自己免疫性唾液腺炎の抗原特異的制御法を開発する。
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