ヒトRAに近似したモデルと考えられるGPI誘導性関節炎モデルマウスを中心に検討し、ヒトRAへのtranslational researchを進めている。本年度の2計画について詳述する。 関節炎特異的TNF誘導分子TNF-induced adipose related protein(TIARP)の解析、関節炎制御機構との関連TIARP mRNAおよび蛋白は関節炎発症初期の脾臓で強発現し、中でもCD11b^+細胞で強く、抗TNFα抗体投与により発現が激減した。また、脾臓CD11b+細胞においてTNFα依存的にTIARP mRNA発現が誘導されることが確認された。一方関節での発現は関節腫脹に伴って増加し、免疫組織化学染色では増殖滑膜組織に強く局在していた。TIARP mRNAおよび蛋白は脾臓で関節炎発症初期に強発現しており、関節では関節腫脹の強度に伴ってTIARP発現が増加した。TNFα中和抗体投与により脾臓でのTIARP発現が減少し、治療効果とともに変動した(Inoue et al.Arthritis Res Ther.2009)。in vitroで抗TIARP抗体を添加するとTNFα、IL-6産生が増加した。また、他の関節炎モデルであるCIAモデルではGPI誘導関節炎同様に、TIARP mRNAは関節炎発症初期脾臓で強発現し、関節では関節腫脹に伴って増加した。現在TIARP-KOマウスを利用して、TIARPの関節炎への関与を検討している。 ヒトSTEAP4(six transmembrane epithelial antigen of the prostate-4)のRA患者での病因的意義 ヒトの解析においてSTEAP4がSTEAPファミリー分子の中で特異的に関節滑膜組織に強発現し、RA滑膜におけるSTEAP4発現はOAの発現と比較し有意差は確認されなかった。免疫組織化学染色でRA患者CD68^+滑膜細胞に局在していたが、OA患者では滑膜線維芽細胞に発現が強く認められた。MH7AをTNFα刺激するとSTEAP4蛋白の発現亢進が観察された。また、滑膜細胞にベクター導入でSTEAP4を過剰発現させるとIL-6産生が抑制され、逆にsiRNAによるSTEAP4抑制によIL-6 mRNAの発現が亢進した(p<0.05)(submitted)。 これらのことより、TIARPは脾臓にて関節炎初期に誘導され、CD11b^+細胞に過剰発現し、関節滑膜では腫脹とともに増強した。ヒトSTEAP4は関節滑膜に局在し、TNFα刺激で発現が誘導され、IL-6の発現を調節している可能性が示され、RAの病態に関与する"新たな関節炎制御分子"である可能性が示唆された。
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