研究概要 |
本年度の2計画について詳述する。 関節炎特異的TNF誘導分子TNF-induced adipose related protein(TIARP)の解析、関節炎制御機構との関連-TIARP欠損マウスを用いて、in vivo,及びin vitroの解析を進めた。CIA(B6背景)を誘導すると、TIARP欠損マウスで明らかな増悪傾向が認められ、関節局所は好中球浸潤を主体とする強い関節炎が起き、血清中でもIL-6濃度が有意に上昇していた。また、関節炎発症直後にIL-6受容体抗体を投与すると関節炎が減弱することから、その増悪機構にはIL-6が強く関与していることが示唆された。現在腹腔内マクロファージを用いて、TIARP欠損マウスにおける細胞レベルでのIL-6産生制御メカニズムを解析中である。 RA患者におけるシトルリン化GPIに対する自己抗体の同定、および病因的意義-RAではシトルリン化蛋白に対する自己抗体が出現し、病因への関与が示唆されている。一方、動物モデルにおいては関節炎原生が証明されているGPIに対しては、RAでのシトルリン化による病因的意義は明らかでない。RAにおけるシトルリン化GPIに対する免疫応答やその病因的メカニズムを明らかにすることを目的とし研究を進めた。環状化シトルリン化GPI peptide(CCG)を3種(CCG-1,2,3)作成し、RA患者208名、自己免疫疾患患者202名、健常人174名の血清中の抗CCG抗体の有無を検討した。対象シトルリン化蛋白として、RAで重要とされている環状化シトルリン化α anolase peptide(CEP-1)、CCPを用いた。またHLA-DR genotypingを行ない、HLA-DRB1 shared epitope allele(SE)の有無と抗CCG抗体との関連を検討した。更に抗CCG抗体陽性RA患者35名において、生物学的製剤治療前と6ヶ月後での抗CCG-1,2,3と抗CEP-1抗体価をELISAで測定し比較した。 CCG-1,2,3に対する抗体の陽性率はRAでそれぞれ8.7%、26.0%、19.7%で、RAでの特異度はそれぞれ100%、99.7%、89.1%と、特にCCG-1,2で高かった。抗CCG-2抗体の陽性率はSEを有する群で有意に高く関連が示唆された。患者群で治療6ヶ月後には疾患活動性(DAS28-CRP)は有意に低下していたが、CCG-1,3、CEP-1に対する抗体価は有意な変化を認めなかった。一方抗CCG-2抗体価は有意な低下を示し、疾患活動性と関連していることが示唆された。これらより、環状化シトルリン化GPIペプチドに対する自己抗体がRA患者血清に存在することを世界で初めて示した。抗CCG-2抗体は特異度が非常に高く、RAの活動性とリンクして変動することが想定され、診断マーカー、疾患活動性マーカーとしての可能性が示唆された。
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