当施設において難治性自己免疫疾患23例(強皮症19例、皮膚筋炎3例、ウェゲナー肉芽腫症1例)に対し、自己造血幹細胞移植(自己HSCT)を施行し、有効性と安全性について確認してきた。本研究の目的である最適な造血幹細胞移植療法の開発にあたり、昨年度強皮症患者に対するCD34純化自己HSCTの臨床効果が非純化自己HSCTに比し優れている事を明らかにした。本年度は強皮症患者に対する自己HSCT後のリンパ球における遺伝子発現プロファイルの変化を純化及び非純化自己且SCT間で比較する事を目的とした。強皮症患者(移植前、純化自己HSCT後、非純化自己HSCT後)または健常人由来のリンパ球をT細胞5分画(CD4ナイーブ、CD4メモリー、CD8ナイーブ、CD8セントラルメモリー、CD8エフェクターメモリー)、B細胞3分画(ナイーブ、メモリー、plasmablast)に分けフローサイトメトリーを用いたソーティングにより各分画を回収した。各々の細胞集団よりRNAを調製、逆転写後、cDNAアレイを用いて、強皮症患者のリンパ球の遺伝子発現プロファイルを健常人と比較した。両者で発現量に2倍以上差がある遺伝子に着目すると、リンパ球各亜分画において800から1500遺伝子が抽出された。これらの遺伝子について、自己HSCT施行後の強皮症患者では健常人と自己HSCT施行前強皮症患者との中間の遺伝子発現プロファイルを呈し、更に純化自己HSCT施行強皮症患者は非純化自己HSCT施行患者に比し健常人により近い遺伝子発現プロファイルを呈した。本研究により強皮症患者リンパ球各亜分画において健常人とは遺伝子発現プロファイルが異なる事が明らかになった。強皮症患者において臨床効果が優れる純化自己HSCT後に遺伝子発現プロファイルがより正常化する事は、強皮症に対し純化自己HSCTを選択する理論的根拠となる。
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