本年度の研究は、主にcIN85 RNAi loxPベクタートランスジェニックマウスの作成を集中して行った。昨年度の研究において樹立したCIN85 RNAi loxPベクタートランスジェニックマウスF14ラインを十分に増やした上で、CD19-CreならびにCD21-Creトランスジェニックマウスとの交配を重ね、前者では骨髄Pro B細胞の段階からの、後者では成熟B細胞の段階からのCIN85ノックダウンマウスの作成を試みた。数ヶ月にわたる交配を繰り返した結果、CD19-CreによるCIN85ノックダウンマウスを得ることはできなかったが、CD21-CreによるCIN85ノックダウンマウスを少数であるが得る事ができた。今後、この後者のマウスの作成を継続しつつ、一方ではこのマウスを用いて、1)中枢ならびに末梢でのB細胞分化2)免疫グロブリン産生3)B細胞表面マーカー4)B細胞内シグナル伝達5)B細胞のサイトカイン産生能6)B細胞の生存・増殖7)自己免疫疾患発症の有無などについての検討が可能である。 また、本年度はヒト自己免疫疾患B細胞におけるCIN85発現異常の機序の解明も試みた。SLE患者B細胞ではCIN85発現低下が蛋白レベルで顕著なことから、ユビキチン化による蛋白修飾系に着目した。その結果、CIN85はBCRシグナル伝達分子を標的としたユビキチン化には促進的に作用したが、CIN85蛋白自体のユビキチン化は明確に認めなかった。現在、microRNAを介したCIN85蛋白発現制御の可能性についての検討も進めている。
|