1. 細胞培養系における検討 ヒトII型肺胞上皮細胞株であるA591とヒト肺線維芽細胞を24-wellプレートを用いたI型コラーゲンゲル中でともに1×10^5 cells/mlで14日間の混合培養を行った。コラゲナーゼ処理によりゲルを可溶化し、細胞を回収した。細胞をバッファーで洗浄後、II型肺胞上皮細胞と線維芽細胞(抗CD90抗体反応性)の各々の細胞の増殖やアポトーシスを解析した。PDGF10ng/ml刺激は線維芽細胞の増殖を選択的に促進し、これはイマチニブにより抑制された。IL-17の影響も検討したが、本実験系における線維芽細胞の増殖に及ぼす影響は明らかでなかった。さらに、肺胞上皮細胞の傷害・剥離と、線維芽細胞増殖の関連を明らかにするために、一部のA591細胞を機械的に剥離する傷害モデルを作製して、そこにPDGFなどのサイトカイン刺激の有無を加えることにより、線維芽細胞の増殖に及ぼす影響を検討したが、PDGFなどの影響は明らかではなかった。 2. 動物モデルにおける検討 12-15週齢の雄性ICRマウスを用いて、麻酔下でdayOにブレオマイシン2mg/kgまたは10mg/kgを気管内投与して、Day7に肺の出血および炎症や線維化を検討した。昨年度、肺の病理組織学的な検討を行い、ブレオマイシン2mg/kgの投与では線維化病変が主体に形成され、一方、10mg/kgの投与ではびまん性肺出血が主体であることが明らかとなった。さらに別の動物モデルとして、最近急速進行性間質性肺炎のモデルとして報告されたIL-2+IL-18誘導性間質性肺炎を用いた検討も行ったが、間質性肺炎の再現性が困難であり、ブレオマイシンモデルの方が適していると考えられた。 以上の検討によって、間質性肺炎の病態において、肺胞上皮細胞傷害と線維芽細胞増殖の連動の一部が明らかにとなり、また動物モデルが得られたことにより、このような難治性病態に対する分子標的療法の確立に向けた基盤が形成されつつある。
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