研究概要 |
膠原病、リウマチ性疾患は、多彩な自己抗体の産生と多臓器障害を特徴とするが、中でも全身性エリテマトーデス(SLE)は、その病態形成に自己のDNAあるいはRNAに対する自己抗体が関与する。 Toll-likere ceptor(TLR)は、自然免疫をはじめとして様々な疾患との関与が知られているが、膠原病、リウマチ性疾患においてもTLRの関与が強く疑われている。SLEのモデルマウスであるBXSBマウスにおいて、疾患を促進させるYaa(Y-linked autoimmune acceleration)遺伝子変異は、本来X染色体上に存在するtlr7,tlr8をはじめとする十数個の遺伝子を含む領域がY染色体上に転座し、維持されてきたものであることが明らかにされその重要性が示された。一方、IgG Fcレセプター(FcyR)はIgG免疫複合体を認識し、エフェクター細胞の活性化あるいは抑制を行うことで生体防御系を調節する重要な分子群である。中でもFcyRIIBはB細胞の活性化を負にフィードバックする重要な免疫制御分子である。C57BL/6マウスでこのFcyRIIBを欠損させた際には関節リウマチに類似した関節炎を発症する(Sato-HayashizakiらArthritis Rheum2010)が、我々はこのマウスにYaa遺伝子を導入した際には関節リウマチではなく、SLEに類似した腎症をおこしたことをつきとめ、TLR7の重複が疾患特異性をも変化させうる現象を確認しており、論文報告準備中である。さらに我々は、ヒトSLE患者においても解析を行った。SLE患者末梢血におけるTLR7,8,9の発現についてフローサイトメトリー及びmRNAで解析した。患者末梢血のB細胞細胞内においては、TLR7及びTLR9は有意に発現が亢進していていることをつきとめた。TLRあるいはそのシグナルの異常により、膠原病リウマチ性疾患における病態の増悪や発症、さらには疾患特異性に深く関与している可能性が考えられる。
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