【平成22年度の研究目的】 1)プロテオミクスを用いて、米国人大型血管炎患者(高安動脈炎および巨細胞性動脈炎)における抗血管内皮細胞抗体(AECA)の対応抗原候補蛋白を検出・同定する。2)1)の結果を日本人大型血管炎患者の場合と比較検討し、その臨床的意義について考察する。 【結果】大動脈血管内皮細胞および大動脈外膜線維芽細胞(対照)からの抽出蛋白と活動性が高い米国人巨細胞性動脈炎患者血清および米国人健常人血清(対照)を用いてWestern blotting(WB)をおこなった。血管内皮細胞に特異的なAECAの対応抗原候補蛋白スポットを10個検出し、9個の蛋白を同定した。さらに米国人巨細胞性動脈炎患者に特異的なスポットを18個検出し、22個の蛋白を同定した。このうち両者に特異的なスポットは6個であり、3個の蛋白を同定した。同様に、活動性が高い米国人高安動脈炎患者血清を用いてWBをおこなったところ、血管内皮細胞に特異的なスポットを15個検出し、米国人高安動脈炎患者に特異的なスポットを4個検出した。このうち両者に特異的なスポットは4個であり、今後これらの蛋白スポットを同定する。現在、すでに同定された蛋白の組み換え蛋白を用いて米国人および日本人大型血管炎患者血清における自己抗体陽性率を評価している。 【考察】米国人と日本人血管炎患者血清を用いた結果を比較検討したところ、同定されたAECAの対応抗原候補蛋白において、数個は同様であったが日本人と米国人では大きく異なっていた。現在、大型血管炎患者で同定蛋白における自己抗体陽性率およびその人種別評価を行っており、これらの結果が血管炎の診断・治療、更には血管炎の病態解明に非常に重要であると考えられた。23年度は、個々の同定蛋白に対する自己抗体が大型血管炎患者の疾患標識マーカーとなり得るか否か評価する。
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