研究概要 |
本年度はヒト単球より樹状細胞(DC)をin vitroにおいて分化誘導し、その分化過程におけるCP690,550(CP)の作用、およびDC機能に及ぼす影響を検討した。CPが完全にその機能を阻害することが知られているIL-4の有無に関わらず、MHC classII,CD80とCD86を高度に発現したDCの分化が見られた。この結果は、JAK3欠損マウスにおける正常なDC分化と一致する結果であった。しかし、IL-4の作用阻害によりマクロファージへの分化が誘導され、目的とするDCの収率は低下した。そのため、GM-CSFとIL-4でDCに分化後に機能評価を目的としてCP存在下でリポポリサッカライド(LPS)による刺激を行った。通常、LPS刺激によりDCは集簇しコロニーを形成するが、CP添加により濃度依存的にコロニー形成は抑制された。この実験条件下では細胞死が誘導されないことを確認した。さらに、LPS刺激により細胞表面上の発現が増強されるMHC classII,CD80とCD86のうちCP濃度依存的にCD80とCD86の発現が抑制された。この作用は、類似したJAK阻害薬やSrckinase阻害剤では観察されずCP特異的な作用であることが明らかとなった。DCは体内においてもっとも強い抗原提示能力を有する細胞であり、T細胞にたいする作用を検討する目的にヒト末梢血CD4陽性T細胞と共培養を行った。結果、CPの濃度依存的にT細胞の増殖は抑制され、IFN-g産生も抑制された。これらの結果はJAK、特にJAK3がリンパ球系細胞のみならず単球系細胞、特にDCにおいても重要な役割を果たし、その阻害薬であるCPはDCの分化には影響することなく、リンパ球の増殖やサイトカイン産生を抑制することを示している。
|