研究概要 |
自己免疫寛容の維持に重要と考えられているのが制御性(regulatory)T細胞である。これまで注目されてきたCD4陽性CD25陽性制御性T細胞以外にも、生体内で自己免疫寛容を担っている未知の制御性T細胞が存在する可能性が指摘されてきた。申請者は転写因子Egr-2が、マウス脾臓CD4陽性CD25陰性LAG3陽性細胞で高発現しており、マウス生体内の抗原特異的免疫抑制活性に関与していることを確認した。本研究の目的は、ヒト扁桃腺のEgr2発現Tr1様サブセット-CD4陽性CD25陰性CD45RO陽性LAG3陽性細胞及びEgr3発現Th3様サブセット-CD4陽性CD25陰性CD45RO陰性細胞の性質を明らかにすることである。 昨年度はヒト末梢血単核球を免疫不全NOGマウスに移入することで発症する移植片対宿主病(GVHD)において、扁桃腺CD4陽性CD25陰性CD45RO陰性細胞を共移入することにより、体重減少を抑制することを確認し、この細胞集団が制御性活性を持つことが証明できた。本年度は同様のGVHDモデルにおいて、Egr2を発現する扁桃腺由来のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性細胞を共移入することにより、体重減少を抑制することが確認できた。この結果により、ヒトにおいてもCD4陽性CD25陰性LAG3陽性細胞が制御性活性を持つことが判明した。また興味深いことに、自己抗体が出現する自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)および関節リウマチ(RA)において、CD4陽性CD25陰性LAG3陽性細胞が健常人よりも著明に減少していることが確認できた。SLE,RAともCD4陽性CD25陽性Foxp3陽性制御性T細胞も健常人よりも減少していたが、その減少の程度はCD4陽性CD25陰性LAG3陽性細胞の方が大きかった。これらのことから、マウスと同様に、ヒトでもCD4陽性CD25陰性LAG3陽性細胞が自己抗体産生を抑制している可能性が推測された。
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