研究課題
β1インテグリンは細胞接着、細胞遊走、細胞増殖、サイトカイン産生、細胞の生存シグナル等の様々な生物学的機能を担っており、これらの過程において、接着シグナルを細胞内シグナルに変換するレセプターとして働く。一方、関節リウマチ(RA)の炎症反応にβ1インテグリンを介するT細胞の活性化やその後のT細胞遊走能の亢進が関与するという証拠が多数蓄積している。また、RA患者における滑膜細胞、滑液細胞や血管内皮細胞ではβ1インテグリンのリガンドであるフイブロネクチンやVCAM-1等の発現が高まっている事が報告されている。本研究は、それらの知見に基づき、我々が確立したCas-L分子について、以下の検討を行った。Cas family遺伝子ノックアウトマウスと関節リウマチモデルマウス・骨粗鬆症モデルマウスとの交配による、関節リウマチ・骨粗鬆症におけるCas family遺伝子の病態生理学的意義の検討:Cas-Lノックアウト(KO)マウスを用いてコラーゲン関節炎モデルマウスを作成し、関節リウマチの発症率・重症度を腫脹関節数とその程度によるスコアリングを行った。野生型マウス、Cas-L KO heteroマウス、Cas-L KO homoマウスで比較検討したところ、関節炎の発症率は三群で差を認めなかったが、Cas-L KO homoマウス群では、関節炎の発症が遅れる傾向が認められた。関節炎の重症度については、Cas-L KO homoマウス群が、他の2群に比較して、有意に低い重症度を示した。また、コラーゲン免疫後21日目のマウス血清中のサイトカインの比較をLuminexを用いて検討した(23種類)。その結果、統計的に有意差が出たものは、MIP-1alphaと、IL-17であり、双方とも、Cas-L KO homoマウスにおいて、他の2群より、有意に低値をしめした。骨粗鬆症モデルマウス(OPG欠損マウス)と、同一バックグラウンドの野生型マウスを用いて、骨密度の評価を行い、OPG欠損マウスでは有意に骨密度の減少が確認できた。特に、OPG欠損マウスでは長期飼育例において、自然発生的に下肢の骨折が認められた。現在、OPG欠損マウスと、Cas-L欠損マウスの交配を行っており、Cas-L遺伝子の欠失による、骨密度の減少に対する影響を検討する予定である。
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