研究課題
本研究において、マウス喘息モデルを用いて経口免疫寛容のアレルギー性気道反応への抑制効果を明らかにする。まず、抗原による感作の成立前、感作成立後、さらには発症後とタイミングを変えて経口免疫寛容の導入を行い、タイミングの違いによる免疫寛容の効果の違い、気道過敏性やアレルギー性気道炎症への効果の違いを検討した。既に申請者らのグループにより確立された喘息モデルを用い、卵白アルブミン(OVA)の腹腔内感作の後、OVAを吸入暴露し、気道反応を評価した。経口免疫寛容の導入〈1〉low dose:OVA 1mgを隔日で5回、経口投与する。〈2〉high dose:OVA100mgを隔日で5回、経口投与する。結果:感作前の経口免疫寛容の導入:上記のlow doseあるいはhigh doseの抗原投与をOVAの腹腔内感作の前に行い、免疫寛容導入後にOVAの感作、吸入暴露をおこなったところ、気道炎症、気道過敏性ともに著明に抑制が得られた。感作後の経口免疫寛容の導入:上記抗原投与をOVA感作終了後に行い、OVA吸入暴露の後48時間で気道反応の評価を行ったところ、low doseあるいはhigh doseの抗原投与ともに著明にアレルギー性気道炎症および気道過敏性の抑制が認められた。感作、暴露後の経口免疫寛容の導入:抗原感作、吸入暴露の後に上記抗原投与を開始し、経口免疫寛容導入後にOVAの吸入、その後に気道反応の評価を行なった。low doseの抗原投与ではアレルギー性気道反応の抑制効果は得られなかった。high doseの抗原投与では好酸球性気道炎症への抑制効果は得られなかったが、杯細胞の過形成は抑制され、さらに気道過敏性の抑制が認められた。high doseの抗原投与のほうが、アレルギー性気道反応の抑制効果がより強力であった。気管支肺胞洗浄液中のIL-4,IL-5,IL-13といったTh2タイプサイトカインの抑制効果もhigh doseの抗原投与により強くみられた。一方、制御性T細胞数はlow doseの抗原投与により増加を認めた。以上より、経口免疫寛容導入により、アレルギー性気道反応の著明な抑制効果が得られ、導入が早期であるほど効果が強く、高用量ほど著明な抑制効果がえられることが明らかとなった。高用量の抗原経口投与により、感作後や発症後においてもアレルギー性気道反応の抑制効果が得られ、気管支喘息の新たな治療となる可能性が示唆された。
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