研究概要 |
RAなどの自己免疫疾患の制御には、制御性T細胞(Treg)が重要な役割を演じているが、Foxp3の誘導メカニズムは十分解明されていない。また、ヒトでは、TCR刺激やTGF-betaによって誘導されるFoxp3の発現は、低レベルで一過的であり、この発現細胞は抑制機能を持たないことが明らかになった。ヒトFoxp3の発現を増強させ、安定させる物質があれば、ヒトにおいても抑制機能を持つ誘導型Treg(iTreg)が誘導できる。このため、本研究では、制御性T細胞の分化誘導を促進させる生理活性物質を網羅的に解析し、これらの物質のヒト制御性T細胞の分化誘導における役割と機序を解明することを目的とする。まず最初に、生理活性脂質や核内受容体リガンドなどのライブラリーから、Foxp3の発現が増強する物質をスクリーニングし、14種類得た。これらのうち、まず、PPARalphaおよびgammaアゴニストのヒトTregの分化誘導機序について解析した。その結果、PPARアゴニストを投与した群では、コントロール(DMSO処理)群と比較して、5種類ともFoxp3の発現増強がみられ、加えて抑制機能を持ち、28日間の長期培養でも機能は維持された。この抑制機能の獲i得は、PPARアゴニストがTGF-betaと協調してDNMT発現を抑制することによって、Foxp3遺伝子プロモーター領域の脱メチル化を促進させ、Foxp3の発現が維持された(J,Immunol2010)。次に、lysophosphatidylcholine(LPC)は、nTregsからのTGF-betaの産生を亢進することにより、nTregsのFoxp3の発現が増強し、抑制機能を亢進させることを見出した。ノックダウンの実験から、LPCはnTregs上のGPR4ではなく、G2Aを介してMAPKsを活性化し、TGF-betaの産生を亢進した(BBRC2011)。以上のように、ヒトiTregやnTregの抑制機能を亢進する生理活性脂質が単離でき、今後臨床応用が可能になることが期待できる。
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