研究概要 |
1. TLR4刺激による気管支喘息抑制効果の免疫学的機序の解明 (1) 刺激型抗TLR4抗体(UT12)を投与しTLR4刺激を受けたマウスをオバルブミンで感作した後、脾臓細胞を単離してin vitroでオバルブミン刺激したところ、UT12投与群では、Th2サイトカインであるIL-4,IL-13の産生が抑制されていた。また、IL-17A産生も抑制されており、IFN-γの産生上昇も認められなかった。 (2) 同マウスより脾臓CD4^+ T細胞を単離し、無刺激の骨髄由来樹状細胞と混合してオバルブミン刺激をした場合も、UT12投与群では、同様の全般的なサイトカイン産生の抑制が認められた。(3)一方、UT12非投与のマウスから単離した脾臓CD4^+ T細胞とUT12を投与したマウスから単離した脾臓樹状細胞を混合してオバルブミン刺激をすると、サイトカイン産生の抑制が認められた。(4)同マウスから単離した脾臓樹状細胞では、UT12投与群で、抗原提示関連分子であるMHC class II,CD86,CD40の発現が抑制されていた。(5)UT12を投与したマウスはLPSトレランス状態になっており、トレランスの程度はUT12による気道過敏性抑制の程度と相関していた。 以上より、UT12はLPSトレランスを誘導することにより、樹状細胞の抗原提示関連分子発現を抑制し、その結果、CD4^+ T細胞の抗原感作が抑制され、気管支喘息の発症が抑えられると考えられた。これは、TLR4刺激が気管支喘息を抑制する機構としてLPSトレランスが関与していることを新規に解明したものであり、気管支喘息の予防治療戦略において非常に重要な知見を加えるものである。 2. UT12の乳児期投与による気管支喘息発症抑制系の解析 本研究期間内には解析を行わなかった。 3. 刺激型抗ヒトTLR4モノクローナル抗体の作製とその効果の解析 ヒトTLR4分子を発現する安定発現細胞株を作製し、TLR4ノックアウトマウスに免疫して、TLR4を介して細胞に刺激を入れる抗体をスクリーニングしたが、本研究期間内には目的の作用を持つ抗体は得られていない。 2. 3.については次年度も引き続き研究解析を行っていく。
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