研究課題/領域番号 |
21591284
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
鈴木 章一 佐賀大学, 医学部, 助教 (40253695)
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研究分担者 |
出原 賢治 佐賀大学, 医学部, 教授 (00270463)
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キーワード | イオンチャンネル / ラクトペルオキシダーゼ / ペンドリン / 気管支喘息 / チオシアネート / ヒポチオシアン酸 / 慢性閉塞性肺疾患 |
研究概要 |
気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の病態形成における陰イオンチャンネル「ペンドリン」の役割を明らかにするために、今年度も引き続きペンドリンによって気道管腔側に輸送されるチオシアネートイオン、並びにこのイオンと過酸化水素から、気道管腔に存在するラクトペルオキシダーゼの酵素反応によりに産生される「ヒポチオシアン酸」に着目した。既に、気道上皮細胞に対して、ヒポチオシアン酸はNF-kBを活性しIL-8等の炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導することを見いだしたが、今年度はヒポチオシアン酸によるNF-kBの活性機構を中心に解析した。ヒト気道上皮細胞株(NCI-H292細胞)の核抽出液を用いたgel shift assayによりヒポチオシアン酸により活性化されるNF-kBの構成因子を調べたところ、p52、p65-c-Rel及びRel-Bは検出されず、p50のみ検出され、ヒポチオシアン酸により活性化されるNF-kBはp50のホモダイマーから構成されていることがわかった。p50は転写活性化ドメインを保有していないので、ヒポチオシアン酸は転写活性化ドメインを有する他の因子をも同時に活性化しこれがp50と複合体を形成して炎症性サイトカインの遺伝子が誘導されると考えられた。またH292細胞をヒポチオシアン酸処理し、細胞内レドックスの状態を調べたところ、還元型グルタチオンの量が顕著に減少し、酸化型グルタチオンの量が増加していたので、ヒポチオシアン酸によるレドックス変化がNF-kBの活性化に関わると考えられた。しかし過酸化水素によりH292細胞の細胞内レドックスをヒポチオシアン酸刺激時と同様な状態へ変化させてもNF-kBは活性化されなかった。この結果からヒポチオシアン酸は単に細胞内レドックスを変化させるだけではなく、この酸に特有の作用機構が存在し、これによりNF-kBが活性化される可能性が考えられた。
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