アレルギー疾患治療、予防を目指し、血球系細胞、特にアレルギー反応制御に重要な役割を果たすマスト細胞や樹状細胞における転写調節因子の機能、特徴的な遺伝子発現制御、細胞分化、遺伝子多型について解析を行ってきている。 まず、転写調節因子PU.1に関わる成果として、樹状細胞における幾つかの遺伝子発現、即ち樹状細胞がT細胞応答をコントロールする鍵となるMHC class IIの発現に必須であること、活性化刺激に応答して発現するTNF-αのプロモーター制御に関わることなどを見出した。 転写調節因子GATA-1はPU.1と協調的に働くことによりマスト細胞や好塩基球に特徴的な遺伝子発現を制御していることを報告してきた。また、PU.1の発現レベルがマスト細胞・好塩基球系列と樹状細胞・単球系列の分化を制御することを示してきたが、今回、樹状細胞におけるGATA-1強制発現の実験から、GATA-1の発現レベルが樹状細胞系列とマスト細胞系列の分岐を決定する一因であることを報告した。 アレルギー疾患関連遺伝子として高親和性IgE受容体α鎖(FCER1A)や低親和性IgE受容体(FCER2)遺伝子上に遺伝子多型を検索し、見出された多型の統計学的解析としてアレルギー疾患におけるリスクファクターとしての評価と異なる民族(日本とポーランド)間での多型比較を行い、更にこれら多型が遺伝子機能に及ぼす影響を分子生物学的に解析してきた。
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