アレルギー・自己免疫疾患の治療、予防を最終目標に、免疫担当細胞の遺伝子発現や機能を制御する転写調節因子の働きを解析してきている。特に、I型アレルギー反応の制御を目指し、マスト細胞・好塩基球におけるIgE受容体構成分子の発現制御機構解析や、マスト細胞系列と樹状細胞系列の分岐を決定する分子として見出したPU.1の機能解析を進めている。 本年度は、マスト細胞特異的分子c-kitの発現制御機構解析によりGATA2がSp1を介してプロモーターを転写活性化する機構があることや、エピジェネティック遺伝子発現制御の研究からHDAC阻害剤がマスト細胞のアレルギー反応を抑制しながら感染に対する防御反応をむしろ亢進する作用を持つことなどを見出し、報告してきた。ごく最近では、Notchシグナルに応答してマスト細胞が、従来樹状細胞などの特定の抗原提示細胞に限られると考えられていたMHC class II発現を引き起こすこと、及びその分子機構について明らかにした。PU.1については、樹状細胞の機能や遺伝子発現調節に関わる分子機構を詳細に解析し、少なくとも抗原提示能の調節に重要な共刺激分子群CD80・CD86の発現に必須であり、樹状細胞の機能制御を介して、自己免疫疾患治療応用に展開できる可能性を見出した。 また、遺伝子多型と疾患の相関については、IgE受容体α鎖遺伝子プロモーター領域の多型がアトピー性皮膚炎や炎症性腸疾患と関連すること、TLR2プロモーター多型がアレルギー疾患と相関すること、などを日本人と欧州の異なる民族を母集団とした統計学的解析と分子生物学的解析を行い報告した。
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