TNF-α、IL-6など炎症性サイトカインと肩を並べる存在として、炎症誘導分子であるOX40リガンドに本申請では着目し、この分子の持つ炎症応答誘導能を、ヒト細胞を用いたin vitroの実験系で最終年は検討した。具体的に、より実用的な試薬として、スタチンに注目し、シンバスタチンとピタバスタチンを用いて、炎症誘導分子OX40リガンドの発現を抑制できるか、純化したヒトミエロイド系樹状細胞サブセットをOX40リガンド誘導物質として胸腺間質リンパ球増殖因子(TSLP)存在下で24時間培養する条件下で検討した。 TSLPは強力なOX40リガンドの誘導因子であり、TSLP単独での培養でヒトミエロイド系樹状細胞サブセットはOX40リガンドを発現する。しかしながら、シンバスタチンあるいはピタバスタチンの添加により、その発現は抑制されることが判明した。さらにスタチンによるメバロン酸合成阻害に関与するメバロン酸、GGPP(ゲラニルゲラニルピロリン酸)、Rho kinase阻害剤をそれぞれ用いたところ、メバロン酸とGGPPを添加することによりスタチンの持つOX40リガンド阻害能は解除され、Rho kinase阻害剤はスタチンと同等のOX40リガンド発現の抑制能を持つことが判明した。さらに、ミエロイド系樹状細胞におけるOX40リガンドの発現の分子機構として、NFkBp50が重要であることが報告されているが、スタチンはこのTSLPによってリン酸化されるNFkBp50を抑制することも今回の実験で判明した。この結果からスタチンは強力な炎症抑制効果を持ち、TSLP-OX40リガンドが関与するとされるアレルギー性炎症に有効な薬剤としてのポテンシャルを示唆できた。
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