研究概要 |
1.つつが虫病と、日本紅斑熱の急性期サイトカインの比較 再興リケッチア感染症・つつが虫病(Tsutsugamushi disease)32例および、新興リケッチア感染症・日本紅斑熱(Japanese spotted fever)21例の、急性期の血中サイトカイン濃度を比較した。適切な治療により、いずれの症例も軽快した。日本紅斑熱において急性期には炎症性サイトカインCTNF-α,IL-6,IFN-γ)ならびに、ケモカイン(IL-8,IP-10,MCP-1,MIP-1α,MIP-1β)の血中濃度はいずれも有意につつが虫病より高値を呈した。とくに、TNF-αは2.6倍、IFN-γは3.0倍を呈し、IL-8は9.6倍、IL-10は4.0倍に達していた。多くの臨床家により報告されている日本紅斑熱がつつが虫病に比較し、重症化しやすいこととの関連性が示唆された。重症化を回避するためには、高サイトカイン血症を背景とするSIRS(systemic inflammatory response syndrome)を鎮静化する必要があり、そのための治療の工夫が求められ、現場からはテトラサイクリン系薬とニューキノロン系薬の併用の有効性が示唆された。 2.サイトカイン産生抑制のための抗菌薬の効果 Minocycline (MINO)は抗リケッチア活性を有する抗菌薬である。つつが虫病では特効的作用を示し得るが、日本紅斑熱では有効性を示さないことが多く、ニューキノロン系薬との併用による救命例の報告が増加している。ヒト単球系THP-1細胞を用い、MINOおよび、ciprofloxacine(CPFX)を単独ならびに併用にて各種サイトカイン/ケモカイン産生に与える影響を検討した。P.aeruginosaのLPS刺激による実験系で4時間後には、TNF-α,IL-8,IP-10,MCP-1,MTP-1α-,MIP-1β,RANTESにおいて、各薬剤単独に比較し、併用において相加的な産生抑制効果が認められた。臨床的経験から、テトラサイクリン系薬とニューキノロン系薬の併用が重症化回避のために有用である根拠の一つとして、サイトカイン産生抑制の増強効果があることが推測きれた。
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