細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジア(我々が同菌日本株の全ゲノムを初めて解読し、種々のユニークな機能を解明)は、肺炎の主要原因菌で動脈硬化病変部にその感染がほぼ100%検出される。クラミジアは約3日間の生活環で動物細胞内で、封入体を形成した後、細胞外へ放出されることから、その生活環とアポトーシスとの関係も解明が期待される。 また、同菌は感染細胞内で封入体膜を形成して、数日のlife cycleを経て増殖し細胞外に放出されるが、これまでに我々はアポトーシス制御因子Apaf-1欠失細胞ではクラミジア増殖が高度促進されており、この封入体膜タンパクの1つIncA2(カスパーゼをリクルートするドメインCARDを持つ)がcaspase-9の活性を増強したり、ミトコンドリアタンパクとの相互作用により宿主細胞アポトーシスを制御して菌の増殖を制御していることを発見している。 21年度では封入体膜タンパクIncA2がApaf-1やcaspase-9などからなる宿主アポトゾームをいかなる機構により制御されていることがわかった。すなわちApaf-I欠失細胞で肺炎クラミジア感染増幅、caspase9欠失で感染低下があり、caspase9阻害剤による肺炎クラミジア増殖抑制機序の解明ができた。 また、クラミジア封入体膜・IncA2と宿主アポトソームの相互作用も確認できた。22年度はさらにApaf-1のクラミジア感染抑制に機能するドメインの同定を試みたが、とくに特定の部位としてクラミジアに特異的に作用するものではなく、Apaf-1のもつカスパーゼ活性化の制御によるアポトーシスの制御によってクラミジアの増殖が影響されることが解明された。またクラミジア封入体内にcaspase9の存在が形態的にとらえることができ、クラミジアが増殖にcaspase9を利用しているか、細胞質内のcaspase9を減少させてアポトーシスを制御することがクラミジアの増殖に関係していることが示唆された。caspase3やcaspase8の変化は2時的なものでクラミジアの増殖に直接的に関与するものでないことも示された。
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