研究概要 |
MRSAの分子疫学解析にはPFGE(Pulsed-field gel electrophoresis)やMLST(multilocus sequence typing)などが行われるが、少し煩雑であり、多数の株を解析することは困難である。このような理由から、病原因子検出とSCCmec判別を組み合わせたreal time-PCR法による簡便で迅速な分子疫学的方法を確立した。当院臨床分離株を用いて感度ならびに特異度を検証した。概略は以下の通りである。 1. MRSAを検出する遺伝子として、nuc(nuclease)、mecA(耐性遺伝子)を使用した。 2. SCCmec型については、I-IV型を同定するために3つのプライマーセットを設計し、組み合わせでタイプを判定した。 3. 病原因子については、市中感染型MRSAに特徴となるPVL(Panton-Valentine Leucocidin)、etb(exfoliative toxin type b)に加え、院内感染型が保有するTSST-1(toxic shock syndrome toxin 1),sec(enterotoxin type c)のgeneを選択した。 4. キレックスを用いてDNA抽出を実施し、TaqMan probeを用いてPCRを行った。2波長測定が可能なLightCycler480にて、上述したtarget geneを同時に検出した。1ウェルで2つのgeneを検出できるように系をくみ、1sampleにつき5つのウェルを用いることで、一度に多くのsampleの解析が可能となった。 5. 当院で分離されたMRSA臨床分離株を解析し、SCCmec型については遺伝子シークエンス、病原因子などの成績については他の方法と比較し、有用性が確認された。
|