研究概要 |
本研究は,compromised hostsにおける好中球機能を中心とした感染防御能を評価するために,ごく微量の血液検体で,簡便/短時間に実施できるモニタリングシステムの確立を目指したものである。さらに,重症感染症患者やcompromised hostsの好中球機能異常を細胞膜上の受容体,情報伝達系,遺伝子レベルで解明することである。これらの解明は,compromised hostsの感染予防や,宿主感染防御能を考慮に入れた抗菌薬療法や免疫補助療法を実施する上で極めて役立つと思われる。 平成21年度においては,以下の研究成果を得た。 1)殺菌能は約0.1mlの全血と分離好中球を用いた化学発光法(chemiluminescence : CL)を用いて,1年で50名のボランテイアで測定し,全血CLは過去の分と合わせて,合計250名の健常人の活性酸素産生能の基準値を決定した。 2)遊走活性の測定は、機能評価が好中球100個で解析可能なEZ-TAXIScanを用いて,IL-8,fMLPを遊走因子とそして50名のボランテイアで測定し,基準値を決定した。 3)セプシス患者60名の遊走活性を測定し,IL-8,fMLP刺激による遊走速度は健常人に比較して低下しており,その低下の一因として,好中球細胞膜上のIL-8受容体の発現低下,細胞内のIL-8のmRNAの低下,IL-8刺激によるMAPK familyのリン酸化の低下であることを明らかにした。 4)同患者の好中球膜上抗原発現は,TLR-2,4,CD14の発現増加,CD11b,CD16の発現減少を確認した。 また,回復期には健常人と同様のレベルまで抗原発現は回復した。
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