研究概要 |
平成22年においては,以下の研究成果を得た。 1) 殺菌能のマーカーの一つである全血CLは,H22年度末まで合計300名で測定され,健常人の活性酸素産生能の基準値が決定できた。Compromised hostsでは,セプシスや肺炎などの重症細菌感染症が起こると,比較的免疫能が保たれている場合は,全血および分離好中球共にzymosan刺激,PMA刺激によるCL値は高値を示したが,血清オプソニン低下例はzymosanや薬剤耐性菌刺激では低値であった。 2) 遊走活性の測定は,EZ-TAXIScanを用い,IL-8, fMLPを遊走因子として,延べ100名のボランティアで測定し基準値を決定した。これまでセプシス患者および肺炎患者80名の遊走活性を測定し,IL-8,fMLP刺激による遊走速度は健常人に比較して低下しており,その一因として好中球細胞膜上のIL-8受容体の発現低下,細胞内のIL-8のmRNAの低下,IL-8刺激によるMAPK familyのリン酸化の低下であることを明らかにした。基礎疾患を有する患者やステロイドパルス療法患者では,その傾向は顕著であった。これらの研究成果の1部は,論文投稿中である。 3) セプシス患者の好中球膜上の抗原発現においては,TLR-2, 4, CD14の発現増加,CD11b, CD16の発現減少を確認した。また,回復期には健常人と同様のレベルまで抗原発現は回復した。 この研究成果は論文投稿中である。 4) 健常人の好中球だけでなく,好中球様に分化させたHL-60を使用して,これにCXCR1(IL-8R)遺伝子を導入したHL-60を作製した。この細胞株は,IL-8でプライミングすると活性酸素産生が軽度増強し,遊走活性はCXCR1導入HL-60で改善が見られた。この系は,薬剤などが好中球遊走に与える影響を評価するのに有用と思われる。この研究成果も論文投稿中である。
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