研究概要 |
本研究の目的は本邦において、臨床的に問題となっているペニシリン耐性肺炎球菌を含めた肺炎球菌が人気道上皮細胞上にバイオフィルムを産生し、耐性化の一因となっているかどうかを明らかにし、かつ治療戦略をたてることである。 肺炎球菌バイオフィルムの研究において、最適なバイオフィルム観察システムの構築は非常に重要なことである。肺炎球菌は自己融解を起こすため、長期間培養では、培地の種類により、実験結果に大きい影響を与える。そのため、我々はTrypticase Soy broth(TSB), Mueller Hinton Broth(MHB), Brain heart infusion broth(BHI)、及びBHIにグルコース(10mg/ml)を添加したsBHI計4種類の液体培地を用いて、薬剤感受性株、多剤耐性株、ATCC BAA-344株及びATCC49619株を対象とし、24及び48時間培養し(37℃、5%CO_2)、Microtiter biofilm assayにて、バイオフィルムの産生能を検討した。結果として、いずれの菌株では、sBHIを培養液とした場合は、ほかの培養方法より、菌の増殖は安定し、より高いバイオフィルム産生能が測られた。 今後、以上の培養方法により、共焦点顕微鏡、電子顕微鏡やcontinuous flow cell chamberなどの方法による観察を行い、更に人気道上皮細胞(BEAS-2B)上に肺炎球菌バイオフィルム産生の特徴を確認し、より詳細に解析する予定である。また、各薬剤耐性遺伝子はバイオフィルム産生に関与する可能性が示唆されているが、今後、該当遺伝子はリアルタイムPCR法にて、バイオフィルム産生に影響する可能な因子として研究していく予定である。
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