平成22年度は臨床的にPWSやASが疑われたが、遺伝学的に診断に至らなかった例を対象としてDNAアレイ法を用いて解析を行った。特に、PWSを疑われた78例と対象としてデータを得ることができた。その結果、17例に1Mb以上の染色体微細欠失もしくは重複を同定した。これらのうち12例はこれまでに精神遅滞との関連が報告されていた。しかし、5例ではこれまでに報告のない新規の染色体のコピー数変化であった。これらのコピー数異常は両親には存在せず、新規の変化であり、従って、病因と考えられた。これらの結果から、微細染色体コピー数異常は特に乳児期にはPWSと同様の臨床症状を示すことを明らかにすることができた。微細欠失や重複に含まれる遺伝子はPWSの原因遺伝子となんらかの機能的関連が存在する可能性が示唆されるので、今後の検討対象として重要と考えられる。 さらに、中枢神経機能解析の基盤として、脳磁図を用いた周波数解析の技法を発展させ、てんかん患者における有用性を検討した。これまでに用いられていた単一双極子法では、限定的なてんかん原生焦点は同定できるが、広がりをもつ脳活動の解析はできなかった。周波数解析により、従来の手法では同定できなかったてんかん原生焦点の同定および時間的拡延の様子を視覚的に表現することができた。周波数解析の結果は手術中の皮質脳波と良く一致し、また、手術で同定されたてんかん原性焦点を良く表現していた。したがって、脳磁図による周波数解析により、非侵聾的な脳機能解析を行うことができることを示すことができた。
|