研究概要 |
遺伝性ニューロパチーを代表するCharcot-Marie-Tooth(CMT)病は2500人に1人と頻度が高い疾患である.多くの病因遺伝子が明らかにされてきたが,日本人の症例では欧米の報告と異なり,約半数の病因は不明である.日本人CMT病の遺伝的背景を明らかにし,病態に基づいた治療法の開発を試みるために,髄鞘型227例と軸索型136例を対象として解析した.既知の遺伝子については,感度の良いDHPLC法や直接塩基配列を決定し,質的異常について検索した.また,遺伝子の量的変化についてMPLA法を用いて検索した.結果として,日本人CMT病では,CMT1A重複の頻度は脱髄型CMT病も23%と高くなく,日本人CMT1Aの症例は,罹患を自覚せず,医療機関を受診していない可能性が考えられた.PMP22以外遺伝子においては,量的変化の関与は検出されなかった.髄鞘型では約50%,軸索型では約80%の病因が不明であった. 更に,候補遺伝子解析を行い,視神経萎縮,難聴,尿細管アシドーシス,性分化異常などを呈する兄妹例にOPA1遺伝子の複合ヘテロ接合変異検出した.腎障害を合併する2例において,IFN2遺伝子変異を検出した.SNPsを利用した連鎖解析を行い12q42に連鎖する1家系を見出した. 日本人におけるCMT病では,多くの症例において病因遺伝子が特定されず,次世代シークエンサーなどを用いた新たな候補遺伝子の検索を行う必要がある.
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