PTCH遺伝子は細胞の増殖シグナルに関わる遺伝子であり、その変異は神経皮膚症候群であるGorlin症候群(以下GS)を発症させる。我々はGorlin症候群患者の皮膚に放射線を照射すると基底細胞癌が発症することに着目し、GS由来細胞(皮膚線維芽細胞およびリンパ芽球細胞)を用いて放射線照射実験を行った。細胞はすでに変異を報告している患者由来細胞(del 915 C)を同意を得て使用した。PTCHの免疫染色については内因性PTCHがかなり少なく、通常のPTCHポリクローナル抗体では染色精度が低かった。現在複数の各社抗体を比較使用し実験条件を変更して染色を試みている。 1)放射線照射によるPTCHタンパクの細胞内局在性の変化の観察 患者由来リンパ芽球細胞ないし皮膚線維芽細胞に対して1Gyから10Gyまでの放射線を照射し、共焦点レーザー顕微鏡を用いてPTCHタンパクの細胞内局在を観察した。PTCHタンパクがX線照射(量)ならびに照射後の時間経過によりその分布が変化するかどうかを観察したが、染色精度が低く明らかな局在の変化は認めなかった。本実験ではX線照射前後で細胞を2群にわけ、一方は上記の共焦点レーザー顕微鏡による観察を、もう一方はフローサイトメトリーを用いた細胞周期解析を行い、本症候群患者で細胞周期異常(G2/M population増加)の誘発が認められるかどうか現在実験中である。 2)腫瘍組織におけるPTCH遺伝子変異およびタンパク相互作用への影響の有無 Gorlin症候群における主要組織におけるPTCH遺伝子変異とその腫瘍病型について解析を行っているが現在までに表現型と遺伝型の関連は認めていない。PTCH遺伝子は癌抑制遺伝子に分類されており、Knudsonのtwo hit theoryの妥当性について現在検討中である。PTCH遺伝子が果たす役割を今後も調査してゆく。
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