研究概要 |
本研究は、精子形成期精巣に特異的に発現している遺伝子の特定と精子形成障害に関与する遺伝子を発見することを目的としている。23年度は、Ttc29(NYD-SP14)の発現調節とAMH,AMHR2、アンドロゲン受容体(AR)の性成熟期精巣での発現の検討を行った。 1.3週齢下垂体摘出ラットにhCG、rhFSHを2週間投与し,Ttc29発現へのゴナドトロピン、テストステロンの関与を検討した。hCG投与でテストステロン分泌は著明に増加するが,精子形成は精粗細胞に留まっており,Ttc29発現は増加しなかった。rhFSH投与では,テストステロン分泌は軽度増加し,精子形成はパキテン期精母細胞まで進行し、Ttc29発現は有意に増加した。正常ラットの精母細胞でのTtc29発現は,初期から後期にかけて増加した。Ttc29は精子鞭毛運動に関与していると推測され、FSH依存性にセルトリ細胞を介して精母細胞で発現すると考えられる。 2.抗ミュラー管ホルモン(AMH)とその受容体(AMHR2),ARは精子形成の開始に関与している可能性がある。5日齢から50日齢のラット精巣での発現、下垂体摘出ラットでの発現を検討した。AMHは新生仔期に強発現しており、21日齢から50日齢にかけて1/10に減少する。AMHR2は6日齢ではほとんど発現せず,10日齢から増加し21日齢では50日齢と同等となる。AR発現は変動しなかった。7週齢下垂体摘出ラット精巣ではAMH発現が著明に増加し、LH/FSH投与で発現は減少した。AMHR2はFSH投与で発現が軽度増加した。AMHは精子形成の抑制に関与していると推測しており,今後ARを含めて精巣内発現部位の加齢変化を検討していく必要がある。 3.15日齢と50日齢のラット精巣の発現遺伝子の比較をマイクロアレイ法で行っており,精子形成に関連する新たな遺伝子を検索している。
|