本研究は先天代謝異常症において、発熱を契機に発症、重症化する現象のメカニズムを解明することにより治療ならびに予防法を開発することを目的にしている。申請者は脂肪酸β酸化やコレステロール合成など脂質代謝を中心に生体に重要な代謝機能を有しているペルオキシソーム形成異常症患者細胞において、培養温度によりペルオキシソームの生合成や代謝機能が正常化する温度感受性現象を遺伝子レベルで明らかにしている。2年目にあたる今年度はこの温度感受性現象を有する患者細胞を用いて、以下の研究成果を得ている。 1. 温度により代謝機能が回復する前後の遺伝子発現変化の解析 1年目の網羅的解析により有意に変動を認めたhypoxia inducible関連を含めた複数の遺伝子においてリアルタイムPCRで確認するとともに、変動した各遺伝子の代謝パスウェイ上での関連について解析した。さらに実際に患者細胞において低酸素条件にて培養し、通常条件下での培養細胞とそのペルオキシソーム形成能を比較した。 2. 温度により代謝機能が回復する前後のタンパク発現変化の網羅的解析 1年目のタンパク網羅的解析により、2倍以上発現が変動したスポットについて、1と同様に代謝パスウェイ上での関連について解析した。 最終年度にあたる次年度は、上記の解析結果をもとに温度感受性に加えて、低酸素誘導関連因子のペルオキシソーム形成への関与についても検討し、病態解明から発病・進行度の診断バイオマーカーの開発、さらには治療用化合物のスクリーニングに繋げていく予定である。 また今年度はサウジアラビア国立病院とのアラブ人におけるペルオキシソーム病診断協力により、10数例のペルオキシソーム病患者を診断し、報告している。
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