研究課題
本研究はペルオキシソーム代謝異常症患者細胞における培養温度によりペルオキシソームの生合成や代謝機能が正常化または増悪する温度感受性現象をもとに、発熱や酸化ストレス、過食・飢餓などの外的要因が代謝機能に与える影響を細胞、個体レベルで検討し、その機序を明らかにすることにより治療ならびに予防法を開発することを目的にしている。申請者は既に脂肪酸β酸化やコレステロール合成など脂質代謝を中心に生体に重要な代謝機能を有しているペルオキシソーム形成異常症患者細胞においてこの温度感受性現象を遺伝子レベルで明らかにしている。本研究では1、2年目において温度感受性現象を有する患者細胞を用いた網羅的遺伝子発現解析により、温度感受性により有意な変動が確認されたhypoxia inducible関連を含めた複数の遺伝子を抽出し、定量PCRにおいてもその変動を確認し、低酸素培養条件下での検討へと繋げている。さらに最終年にあたる今年度は、個体レベルでの取組みとして高脂肪食投与によるペルオキシソーム代謝機能の変動を検討し、以下の研究成果を得ている。1.妊娠14日の母体から高脂肪食を投与により肥満モデルマウスを作製し、体重増加、血中レプチン値を確認するとともに、普通食投与群と比較した結果、ペルオキシソーム代謝産物である血中極長鎖脂肪酸の低下とプラスマローゲンの上昇を有意に認めた。2.1の結果を受けて生後20週齢時に肝臓におけるペルオキシソーム関連遺伝子産物を比較検討した結果、β酸化系をはじめとしたペルオキシソーム代謝機能が高脂肪食投与群で有意に増加しており、肥満によりペルオキシソーム代謝機能が亢進していることを明らかにした。一方でペルオキシソーム代謝異常症の診断研究として今年度、国内において30数症例の病因を遺伝子レベルで明らかにするとともに、サウジアラビア国立病院との共同研究で5症例、ベトナムハノイ小児病院との間でも6家系のペルオキシソーム病を遺伝子レベルで診断し、報告している。
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http://www1.gifu-u.ac.jp/~lsrc/dgr/shimozawa-hp/