まず、血清FGF23測定の診断的意義を検討した。ビタミンD欠乏性くる病の症例は21名と低リン血症性くる病の症例は9名で、治療開始時の血清FGF23値を比較検討したところ、ビタミンD欠乏性くる病において20pg/ml以下、低リン血症性くる病において40pg/ml以上と、両者の間に血清FGF23値の明瞭な違いが見られた。ビタミンD欠乏性くる病において、アルファカルシドールにより治療した後にFGF23値は上昇し、低リン血症性くる病においても、リン製剤とアルファカルシドールにより治療後に上昇傾向にあり、低リン血症性くる病において治療後もFGF23値は正常化しなかった。 次に、FGF23の新しい標的細胞の可能性について検討した。軟骨細胞では、膜結合型alpha-klothoはほとんど発現していないが、可溶型alpha-klotho (sKL)を添加するとFGF23は、軟骨細胞においてもErkをリン酸化し、Egr1の発現を誘導することを見いだし、FGF23シグナルが伝達されることが明らかになった。さらに、FGF23シグナルの軟骨分化・成熟過程における役割を検討するために、胎仔中足骨を用いた器官培養系でFGF23/sKLの影響を検討したところ、FGF23+sKLは濃度依存性に中足骨の長軸方向への成長を抑制した。また、これらの作用はFGF23中和抗体により完全に阻害された。組織学的検討から、FGF23+sKL群の中足骨では、増殖軟骨層が短縮していた。以上から、FGF23シグナルはsKLの存在下で軟骨の成熟を抑制し、骨成長を抑制する可能性が考えられた。 マウス長管骨から骨細胞を単離し、ビタミンD添加や培養液中のリン酸濃度を上昇させる事でのFGF23の発現の変化を検討した。培養液中で、骨細胞はFGF23産生能力を急速に失うので、評価がやや困難であるが、FGF23の発現は、ビタミンD添加により上昇した。
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