研究課題
早老症(progeroid syndrome)は、老化が異常に早期におこり急速に進行する稀な病態である。動脈硬化や皮膚の老化を若年期より呈し、脂肪萎縮、骨格形成異常や成長障害の合併もみられる。申請者は、早老症の一種でラミン代謝異常による疾患(ラミノパチー)である下顎先端異形成症(mandibuloacral dysplasia、以下MAD)の日本人姉妹例(ZMPSTE24の新規変異証明)に関して、以下の検討を行った。MADでは、ラミンAのプロセッシングが障害され中間代謝物であるファルネシル化プレラミンAが蓄積して核の形態と機能に異常を来たすと考えられている。海外では早老症の治療薬としてファルネシル化阻害剤の投与実験がおこなわれているが、ラミン代謝の代償経路としてgeranylgeranyltransferase 1によりprelamin Aがprenyl化されるため臨床効果が不十分である。今回我々は、日本において骨粗鬆治療薬として頻用されているaminobisphoshonateを、geranylgeranyl化の抑制による上記代謝経路の阻害による核機能の改善と、破骨細胞機能抑制による骨吸収抑制効果を目的として、8歳の姉に対して投与開始した。現時点では投与期間が1年と短期で、臨床症状に明らかな変化を認めていないが、進行性の骨密度低下が抑制され、骨密度の増加傾向を認めている。ラミノパチーでは、生体の早期老化の指標として皮膚線維芽細胞の倍加時間の短縮と継代可能数の減少が報告されているため、患者姉妹の皮膚線維芽細胞の細胞株を培養したところ、成人健常者由来の皮膚線維芽細胞より増殖が遅い傾向を認めた。また、新たにフォロー開始した早老症の日本人兄妹例に関して、LMNAおよびZMPSTE24遺伝子検査を施行したが、progeriaおよびMADで既報の遺伝子変異は認めなかった。
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