ムコリピドーシスは比較的日本人に頻度の高い疾患で、リソソーム酵素の細胞内輸送に関わるマンノース-6-リン酸レセプター回路が障害されるために発症するユニークな疾患である。原因遺伝子のGlcNAc-phosphotrnsferaseの役割はリソソーム酵素に付加された糖鎖末端のマンノースをリン酸化し、リソソーム酵素をリソソームに運搬する主たる経路の舵取りと考えられる。本疾患の細胞レベルでの病態を解明するために、リソソームの関与するオートファジーについて解析し、マーカー蛋白が増加していることからオートファジーの亢進を示した。免疫組織染色から、Inclusion bodyが未分解基質でふくれたライソソームのみならず、LC3陽性のオートファゴソームが増えていることを示した。またこれに関してミトコンドリア機能が障害され、オートファジー阻害剤の3MAによりこの障害が回復することを初めて示した。これはムコリピドーシスの病態として初めての治験であり、将来的な治療の可能性を示すものである。今後は変異蛋白の細胞内局在を解析したり、ラベルした正常蛋白の細胞内運送に関しての解析を引き続き行なう予定である。
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