研究概要 |
Small for gestational age (SGA)性低身長児を対象にインスリン様成長因子(IGF)受容体1型(IGF-IR)の遺伝子解析を行い,SGAで出生した7歳女児とその母にIGF-IRのβ鎖の自己リン酸化領域に,Asp1105Glu変異をヘテロで見出した。 症例は妊娠37週で、体重2175gr(-1.5SD)、身長42.5cm(-2.5SD)のSGAで出生した。彼女はSGAで出生した以外に特記すべきもの無く、健康であった。5歳の時、低身長[93cm(-2.7SD)]を認め、血中IGF-I値が353mg/mL(4.3SD)と高値を示したため、IGF-IR異常症を疑われて精査した。患児の母親も妊娠40週、2300gr(-2.2SD)とSGAで出生し、成人身長が137cm(-4.0SD)でSGA性低身長と診断されている。 本変異IGF-IR遺伝子をIGF-1受容体遺伝子をknock outしたR-細胞に導入してその機能を解析した。 その結果、1) IGF-I添加に伴う細胞増殖能は、野生型に比較して変異導入R-細胞の増殖は不良であった。2) [125I]-IGF-I結合実験では,導入R-細胞上のIGF-Iの結合部位(変異IGF-IR)は、野生型と同等の結合部位と結合親和性を示した。3) IGF-I添加に伴うIGF-IRのβ鎖の自己リン酸化は変異導入R-細胞の方が野生型よりも低反応を示した。 本症例ではIGF-IRのβ鎖の自己リン酸化領域に生じたAsp1105Glu変異により、β鎖の自己リン酸化が障害され、その結果IGF-IR機能の低下をきたしたものと考えられた。
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