研究概要 |
成長ホルモン分泌不全性低身長(GHD)患児において、血清総コレステロール値が幅広い分布を取ることがしばしば経験される。この多様性の原因として、我々は成長ホルモン受容体(GHR)遺伝子Leu544Ile多型が、GHによるコレステロール代謝に関与することを見出した(Ihara, et al. Clinical Endocrinol 2007)。GHR以降のシグナル伝遠に関わる様々な分子も血清コレステロール値の多様性を規定している可能性が推定されるため本研究を行った。対象はGHDと診断しGH治療を行った患児83名と一般成人集団(久山町第3コホート2637名)とした。方法として、NICBに登録されているSTAT5A/B遺伝子のSNPよりHapMapプロジェクトのホームページ上で5ヵ所のtag SNP(STAT5A g. 4992C>A, g. 18132A>G, STAT5B g. -41175A>G, g. -9945C>T, g. 8164G>T)を選択しTaqMan法にて各SNPの遺伝子型を決定した。その結果、GHD患児においてはGH治療前・開始後の血清総コレステロール値と各々の遺伝子多型とに有意な相関(p<0.05)を認めた。一方、一般成人集団においても部分的には同様の傾向を認めたが有意差は証明されなかった。今後、STAT5B遺伝子のプロモーター領域に存在する遺伝子多型が遺伝子転写機能に関与している可能性を想定し、インビトロ機能解析を行う予定である。
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