UBE3Aは細胞内の蛋白質分解経路であるユビキチン、プロテオゾーム系酵素のE3:ユビキチンリガーゼとして働くタンパク質であり、その異常は小児先天性疾患であるアンジェルマン症候群(AS)を引き起こす。今回申請者はAS原因遺伝子UBE3Aトランスジェニック(Tg)マウスを作製し、脳の発生・成熟段階におけるUBE3Aの機能を解析する。将来的に、UBE3A補充によるASの遺伝子治療を視野に入れた基礎研究を行う。UBE3A Tg♂マウスとUbe3a KOマウス(父親由来アレルのUbe3a欠失マウス:Ube3a m+/p-)♀マウスを交配し、F1を以下の4パターンの遺伝子型を持つマウスに分類し行動解析を行った。野生型、野生型+Tg、母親由来アレルのUbe3a欠失マウス(ASモデルマウス)、母親由来アレルのUbe3a欠失マウス(ASモデルマウス)のTgrescueのオス各約20匹の解析では、野生型+Tgでは特に行動上の異常は見られなかった。ASモデルマウスでは活動量(Openfieldでの主に立ち上がり)の低下、不安様行動(Elevated plus maze:高架式十字迷路)の低下、運動学習(rotarod test)の低下、痛覚感受性(Hot plate test)の低下、社会的行動(Social interaction test>の異常が見られたが、Tgにより、不安様行動、痛覚感受性、社会的行動がある程度回復していることが示唆された。平成23年度は脳におけるTgの発現部位、発現量を免疫組織学的に解析した。上記4パターンの脳においてUBE3A発現を免疫染色にて解析した所、Tgによる外来性UBE3Aは線条体で正常レベルと同レベルで発現していたが、その他の脳領域ではわずかにしか発現していなかった。強拡で観察した所、神経細胞特異的に染色されていたことから、外来性UBE3Aは神経で機能している事が確認された。
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