研究課題/領域番号 |
21591333
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
衞藤 義勝 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50056909)
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研究分担者 |
小林 博司 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90266619)
小林 正久 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20312019)
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キーワード | ポンペ病 / 酵素補充療法 / 抗体 / 抗CD3抗体 / アナフィラキシー |
研究概要 |
ポンペ病(PD)は遺伝的にα-glucosidase(GAA)が欠損し、その結果、骨格筋、心筋にグリーコーゲンが蓄積し、進行性に筋力低下、心肥大を呈する疾患である。治療法としては酵素補充療法が開発され有効性が示されているが、酵素製剤に対する抗体が発生し治療効果を著しく阻害することが明らかになっている。今回我々はその酵素製剤に対する抗体発生を防ぐ目的で抗CD3抗体(CD3Ab)による免疫寛容導入を試みた。CD3Abを連続5日wild typeマウスに静脈内投与しその2日後より週に1回連続4週ヒト組換えα-glucosidase(rhGAA)を静脈内投与した。最終投与の1週後のrhGAAに対する抗体価は有意に抑制されていた。1回目の酵素の投与後、11週後に再度rhGAAを投与したが、CD3Abの効果は継続していた。rhGAAにてwild typeマウスを免疫してその後、CD3Abを連続5日投与したところrhGAAに対する抗体は抑制された。これは既に免疫応答が成立している場合でもCD3Abは有効であることを示している。Wildtypeマウスと同様の効果が、GAAが完全に欠損しているPDモデルマウスでも起こるかを検討した。CD3Abを5日連続で投与しその後2週に1回rhGAA(20mg/kg)で合計20回投与を行った。PDマウスはrhGAAを繰り返し投与するとアナフィラキシーを起こし死亡する。CD3Abはこの致死的アナフィラキシーを有意に抑制した(log-rank test p=0.0002)。またrhGAAに対する抗体価も有意に抑制した。ただ抗体抑制の効果はwild typeのマウスより弱かった。CD3Abを投与するとeffector細胞であるCD4+細胞は減少した。Regulatory T細胞とCD4+細胞の比を検討したところ、CD3Abの投与によりCD4+CD25+/CD4+比ならびにCD4+CD25+FoxP3+/CD4+比は上昇していた。また抗CD25抗体をマウスに投与しCD4+CD25+細胞を除去するとCD3Abによる抗体発生抑制効果は消失した。以上よりCD4+CD25+陽性細胞がCD3AbによるrhGAAに対する抗体の発生抑制に重要な細胞であることが判明した。Fc部分を除去してある安全性の高い2種類のCD3Abが現在、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎などで臨床研究が行われておりPDの酵素補充療法での抗体発生抑制にCD3Abは臨床応用可能であると思われた。
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