ヒトゲノムプロジェクトが終了し、ヒトゲノムの一次配列が明らかになったことにより、初めてゲノムコピー数を解析して比較することが可能となった。このことにより、ヒトゲノムには多くのゲノムコピー数多型が存在することが明らかとなり、それらの表現型との関連が注目されている。特にアレイCGH法の臨床応用によって、これまで知られていなかった微細な染色体断片の欠失や重複が多くの神経疾患の発症に関わっていることが明らかになってきた。本研究においては、「小児の発達障害などをはじめとした中枢神経障害を示す疾患患者におけるゲノムコピー数の異常を明らかにし、そのゲノムコピー数の異常が神経症状に及ぼす影響について、明らかにすることが目的である。これまでの解析により、約700例の小児神経疾患患者におけるゲノムコピー数を解析したところ、約17%において何らかの異常が認められた。それらの多くは過去に報告がない新規のゲノムコピー数異常であり、その場合、真に表現型の原因となる異常か、単なる多型であるかの確認が必要となる。そこで、突然変異であるか否かを確認するため両親検体を含めたトリオ解析、公共データベースの検索、ゲノムコピー数異常を示す領域に含まれる遺伝子の発現解析、などを行った。このことにより、両親にはない突然変異で発生したゲノムコピー数異常であり、公共データベースにはない新規の変異であって、ゲノムコピー数異常に比例して発現が変化している遺伝子の存在を明らかにできた。このようにして特定した新規ゲノム変異領域に含まれる遺伝子のうち、真に中枢神経症状に影響を与える遺伝子を同定するために、発現解析を行う必要がある。患者細胞が得られた疾患において検討し、ゲノムコピー数依存的に働いている遺伝子の特定を行った。
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