母乳は子供の急速な成長と発達にとって重要であり、十分なエネルギーと必須栄養素を供給する。感染予防物質・細胞・ホルモン・酵素・成長因子・結合タンパク質など多くの物質を含んでいる。授乳期の経過とともに、母乳中のタンパク質、ミネラル成分は顕著に減少し、逆に乳糖および脂肪成分は上昇する。このような変化に対する明確な理由は、未だ見いだされていない。 特にビタミンEは初乳に多く含まれるが、その後は漸減していく。我々は、このメカニズムとして、乳腺中に存在するビタミンE輸送タンパク質および核内受容体東LXR(hver X receptor: 脂質代謝に関係する転写因子)が関与することを見いだした。この結果を押し進めて、脂質代謝に関連する核内受容体群PPARα・δ・γ(peroxisome proliferator-activated receptor)およびLXRが乳腺組織の脂質代謝および母乳中の脂質濃度を調節するかを検討する。 LXRリガンド投与による母乳中α-トコフェロール濃度の変化 Wistar 雌ラット(17週齢、出産後17日)にLXRリガンド投与を行った。血液中および母乳中α-トコフェロール濃度および脂質濃度は変化した。さらにビタミンEの輸送タンパク質の変動も認めた。以上から、核内受容体LXRにより、乳腺組織中の脂質代謝遺伝子群の変動は母乳中脂質濃度にも影響を与えている可能性を見いだした。
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