研究概要 |
2009年度には,集中治療に対する反応や脳の構造が比較的人間に近い,大動物の低酸素モデルを確立することに主眼を置いた.脳波や近赤外線スペクトロスコピーなどの,臨床と共通する観察項目を多用しつつ,エンドポイントに脳組織学的評価を行うことができるように,実験室の設備を整備し,低酸素負荷を動物に与えることで,24時間の生存後に,大脳皮質の約20-30%の神経細胞が壊死を起こす受傷深度を,比較的高い再現性を持って繰り返すことが可能となっている.従来の大動物モデルでは,全身麻酔管理を継続して行うことが多かったため,神経学的所見の観察・評価が困難であったが,我々のモデルでは,蘇生開始後1-2時間で,ほぼ全例において人工呼吸管理を離脱し,約6時間以内には,多くの症例で哺乳瓶からの栄養摂取が可能となるため,多くの臨床パラメーターを観察事項に盛り込むことが可能である.これらの動物の持続ビデオ観察により,蘇生後12時間~48時間に,人間で見られるのと類似したミオクロニー発作や間代性発作が高率に認められている. これらの動物における,脳波持続モニタリングの技術も確立されており,2010年度から開始されるランダム化試験においては,臨床診断によるけいれん様発作と,電気生理学的発作,これら両者が同時に観察される真のけいれん発作を区別して評価することが可能となる.
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