研究概要 |
まず、生体内の酸化ストレスの基本データとして、肥満小児における血中イソプロスタン濃度を測定し、非肥満対照とそのレベルを比較した。血中イソプロスタン値に男女差ならびに年齢との相関はなく、肥満児は対照の3倍以上高値であり、腹囲および体脂肪率、脂質値やインスリン抵抗性指標と有意に相関した。また、内臓脂肪面積と良好な正相関を示し、肥満合併症および肥満症スコアが高値になるに従い高値となる結果を得た。すなわち、小児でも肥満によって脂肪組織での酸化ストレスが高まり、メタボリックシンドローム(MS)の一因になる可能性が示唆された。この結果は論文として発表できた。また、血中Brain-derived neurotrophic factorレベルについて検討した。この値が男女ともに特に高度肥満やMSを呈する場合に低値となることが明らかとなった。また、血中ビスファチン濃度および出生体重との関連性が高いことも判明した。また、ラット視床下部でのNesfatin-1(脂肪組織と視床下部の両方に発現する脳脂肪細胞系の新規摂食抑制蛋白)遺伝子発現について検討した。出生した仔ラットの脳を1,8,15,22,40および60日目に摘出して凍結切片を作成し、視床下部室傍核・視索上核・弓状核でのNesfatin-1遺伝子発現をIn situハイブリダイゼーション法で解析した。その結果、Nesfatin-1遺伝子発現は生後発達過程においてそれぞれ特異的な発現動態のパターンを呈し、それぞれの部位における生理作用に密接に関連している可能性が示唆された。これらの成績をもとに、胎児・新生児期の栄養とDoHaDに関わる研究を動物実験や脂肪細胞レベルからみる研究を開始している。また、臨床に直結する小児のBMIパーセンタイル値による肥満判定法についても研究している。
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